デザインのツボ

いろんなデザインを観察するブログです。主に技術的な観点から、デザインの優れたポイントを紹介します。

Mayday:FLOS

シーリングライト、デスクライトや懐中電灯など、照明器具のカテゴリーは多岐に亘るけれども、Maydayはこれらの一般的なカテゴリーに当てはめることが難しい。
写真からもわかるように、この照明器具は、シェードが円錐形をしていて、床やテーブルの上に置いて使うことができる。また、フックがあるので何処かに引っ掛けて使うことができる。さらに、コードが長いのでコンセントから離れた位置で使うこともできる。

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(出展:https://flos.com/stories/mayday-anniversary/

普段は床に置いたりハンガーラックに引っ掛けてインテリア照明として使う。ときどき巻き取られたコードを解いて隙間に転がった探し物を照らす。本体は樹脂製で軽く、持ち上げていても腕は疲れない。

 
この照明器具、黒々としたコードが目立つ。一般的に、コードはデザインにとって歓迎されない存在といえる。Maydayが他の商品と一線を画している点は、コードの存在が、デザインを決める最も重要なファクターとなっていることだろう。
 
このコードは、持ち手部分の突起に巻きつけて収納される。巻きつけたコードが光と干渉しないように、突起の位置、長さやコードのボリュームが計算されている。巻きつけたコードの重みで倒れることがないように、シェードの拡がりが計算されている。巻きつけたコードが解けないように、突起は上下外側に向かって開くように設計されている。
 
このように、この照明器具はほとんど全ての部分がコードの処理に関連づけてデザインされている。また、コーンやメガホンを彷彿とさせる形状によって工事用品のように印象付けられて、コードの存在が違和感なく溶け込んでいる。
 
Maydayは、デザインをするうえで普通の感覚ならば扱い難いものを、逆転の発想でデザインに活かすことに成功した好例といえる。ドイツ人デザイナーのコンスタンティン・グルチッチが2000年にデザインしたもので、イタリアのFLOS社から発売されている。高級照明器具ブランドであるFLOSの商品を、手頃な価格で購入できるのも嬉しい。
 
なお、2020年現在、販売20周年の特設サイトが開設されている。この記事で写真を引用したアニバーサリーモデルは、ハンドル部分がアルミ製の限定モデルである。汎用品は以下の写真のようにプラスチック製で、鮮やかなカラーバリエーションで展開されている。ポップな雰囲気で、お好みの色を探すのも楽しい。